人形姫と秘密のお役目

……意識が、ゆっくりと浮かび上がってくる。

 深い水の底から引き上げられるように、少しずつ現実へ近づいていく感覚。呼吸だけが先に戻り、肺に空気が満ちては静かに抜けていく。

 けれど、視界はどこまでも暗かった。


(……見えない)


 遅れて広がる違和感。普段なら繋がっているはずの感覚が、どこにもない。


(あの子と……うさぎの人形と視界を共有しているはずなのに)


 意識を向けても返るのは空白だけ。光も影も距離も、何ひとつ掴めない。ただ音だけが、やけに鮮明だった。


「澪様……?」


 すぐ傍で声がする。


「……蒼真」


 名を呼ぶと、わずかに息を吐く気配が返った。


「よかった……本当に……意識、戻りましたか……!」


 張り詰めていたものが緩むような声音。それでも完全には気を抜いていないのが伝わる。


「心配、しましたからね!」

「……そう」

「反応が薄いですね!?」