人形姫と秘密のお役目 -1-

 その瞬間、曖昧だった世界が一気に輪郭を取り戻し、距離も位置もすべてが明確に結ばれていく。

 瞳が、怪しく赤く光り、すべてがはっきりと“視える”。

 腕の中の人形が音もなく動き出し、私と同じように札を指に挟んで動きをなぞる。

 “それ”が暴れるように腕を振るうが、その軌道もすべて視えている。

 横へわずかに身体をずらしてかわし、そのまますれ違いざまに札を打ち込み、同時に人形が背後へ回り込んでさらに一枚を重ねる。

 霊力が重なり合うたびに“それ”の動きは鈍くなっていき、逃がさないとばかりに踏み込んで距離を詰める。

 人形と完全に呼吸を合わせ、一つ、二つ、三つと札を重ねていき、最後の一枚を中心へ叩き込む。


「……ふう」


 一拍の静寂ののち、“それ”は弾けるように崩れ、黒い塊は霧のように散っていった。

 残った重たい空気も、やがてゆっくりと消えていく。

 周囲から駆け寄る気配。


「次期当主さまが助けてくださったぞ!」

「ありがとうございます、澪様!」