人形姫と秘密のお役目

 私は和服を整え、垂れ下がった耳を持つ、うさぎの人形を抱いて座っていた。
 本家の広い屋敷の一室、障子越しの光が淡く差し込む。
 柱や襖の木目までもが、静かに息をしているように見えた。

 人形は、私にとって命と等しい存在だ。
 そして、この一族に生まれた者は、皆、何かしらの呪いを抱えている。

 私の場合は、目。

 一定時間、直接“視れば”、呪いが発動する。
 だから私は、普段ほとんど目を使わない。

 代わりに、人形を通して世界を見る。

 それができるようになったのは、つい最近のことだった。
 まだ術は不完全で、視界は狭く、距離感も曖昧だ。

 それでも、使わないよりはいい。

 私の家は、いわゆる陰陽師の家系で、人ならざるもの、この世にあってはならないものを視る。
 それが私たちの役目。

 けれど人形越しでは、それらははっきりとは映らない。

 だから結局、最後は自分の目で視るしかない。

 この家に生まれた以上、それは避けられないことだった。