よろしく、ドッペルゲンガー


「私、昨日ハッピーランドでまた百合花(ゆりか)のことを見ちゃったの」

 学校に着くと、親友の愛実(まなみ)がそんなことを言ってきた。

 ハッピーランドは去年できたばかりのレジャー施設。昨日、愛実は二か月前から付き合っている遥馬(はるま)とデートをしていたはずだ。

「ごめん……〝私〟が台無しにしちゃって」

「ううん。百合花のせいじゃないよ。多分、私自身が幻を作り出しちゃってるんだと思う……」

 愛実が、泣きそうな顔で呟いた。

 遥馬は私にとって小学校からの友達だ。ずっと好きな人はいないと言っていたのに、中学校に上がってから愛実と急接近。ふたりはあっという間にカップルになった。

 だけど、順調だった日々も長くは続かず、愛実は遥馬の高い人気に不安を感じるようになり、私に相談してくることも珍しくなかった。

『私は、遥馬くんに相応しくない』

 そんな不安が大きくなってきた頃、愛実の前に、もうひとりの(百合花)――ドッペルゲンガーが現れるようになったらしい。

 その〝私〟は、いるはずのない場所でなにもせず、ただ遠くから二人を見つめているのだという。

 そんなことが頻繁に起こるものだから、遥馬はすっかり気味悪がってしまい、愛実のことも避けるようになった。

 昨日は、愛実が何度も頼んでようやく実現したデートだったのに……。

「遥馬くんからね、別れようって言われちゃった。でも、そうなる覚悟はしてたんだ」

「愛実……」

「逆に二か月もよく続いたよ。やっぱり私には百合花がいればいいかな。だって、百合花の幻を作り出しちゃうくらいだもん。どんだけ依存してるのって感じじゃない?」

「はは、たしかに」

「でも、また誰かのことを好きになってみたい。遥馬くんに恋をしてた時、すごく楽しかったの。また彼氏できるかな?」

「できるよ、愛実は可愛いもん」

「へへ、ありがとう。百合花大好き」

 そう言って腕を絡めてくる愛実を、私はぎゅっと抱きしめた。

 愛実は本当に可愛いから、すぐにまた誰かと付き合うだろう。

 だけど、大丈夫。愛実のことは、これからも誰にも渡さない。

 愛実を取られそうになったら、その時にはまた

 ドッペルゲンガーになりすまして(・・・・・・・・・・・・・・・)

 いつでもどこでも愛実のことを見てる(監視する)からね。