『え、律くんってそういうキャラだったんだ』
『何かイメージと違う』
面と向かって言ってくる。
『急にかっこつけてきてさ、「そんなキャラじゃないですよね?」みたいに思ってさw』
『え〜やばw何かギャップ萌えというより蛙化w』
裏でも言ってくる。
『ねぇ!いるよwかっこつけw』
『ホントだ〜っ!ねぇかっこつけくーんっ!またやってよ、あれ!w』
『やだっ、やめてよっ』
『ほらほら、早く〜っ!』
『やめてっ―』
結局やらされた。ただ、仲良くなってきたな、って思ったから自分を出せると思って"俺"を使っただけだった。
家でもそう。
母さんの前で"俺"を使うと
『やだわ〜っ、"俺"なんて使わないでちょうだいっ!律はずっとかわいい律でいればいいのよ』
そういって貼り付けの笑顔で頭を撫でられる。
貼り付けの笑顔だってバレてると思ってないのか。
それとも自分で自分が誰だかわからなくなっているのか。
家で自分を出せない。
そんなストレスが積み重なってある日の朝。起きると声が出なくなった。
母さんに伝えると
『…何ですって?もう一度言ってみなさいっ!!声が出ない!!?そんなのかわいくないわっ!!もう顔を見たくないっ!!』
そう言って家を出ていった母さんが帰ってくることはなかった。
そのせいで父さんにも嫌われた。
『…お前のせいだぞ、律!!お前のせいで母さんは消えたっ!!お前がいなければっ…!』
自分の子どもによくそんなこと言えるな。
中学一年生のときに思った。
親は子どもを育てる。
それがどんな育て方だろうが、子どもにはどうしようもない。
でも考え方までをも強制するのは絶対、間違っている。
けど咲良ちゃんは違う、と思っていた。
いつも自分のことだけ考えて、行動する、そんな人とは違うって。
いつの間にか思ってしまっていた。
いつも本当の笑顔をくれて、本当の優しさを教えてくれて。
あ、違う。俺に本当の優しさを教えてくれたのは―
『っ、、』
『大丈夫?』
大きくて綺麗な瞳。肌も真っ白で、守ってあげたいって思った初めての相手だった。幼稚園ころ、一人で雨が降るなか泣いていた俺を
心配してくれた。
『ほらっ、風邪ひいちゃうよっ!傘あげるから、ちゃんとお家に帰って温まってね?約束だよっ』
小指を差し出してきたから、思わず自分の小指を出す。
『…わかった、』
『うんっ!偉いね』
そう言って、あたたかい手で頭を撫でてくれた。
雨も強くなってきて、その子は俺に傘を渡して、びしょびしょになりながらも走って帰っていった。
名前も聞けなかったあの子は、
初恋の人だった―



