てのひらは君のため〜クールな年下男子と始める、甘い恋〜

「水があればいいんだけどな。あいにく、今日は牛乳しか買ってない。一リットルの牛乳渡されても困るだろうし……」
 ビニール袋を見下ろして、成瀬くんはブツブツ呟いている。

 彼の言動が予想外すぎて、私はぽかんとしてしまった。
 え、あれ?
 成瀬くんって、怖い人……じゃなかったの?

「いえ、いいです。大丈夫です。心配してくれてありがとう、成瀬くん」
「なんで俺の名前知ってるんだ? もしかして、同じ高校の人?」
 成瀬くんは無表情で尋ねてきた。

「はい、そうです。時海高校二年二組の深森真白《みもりましろ》といいます」
 私は立ち眩みを起こさないようにゆっくりと立ち上がり、自己紹介した。

「じゃあ、深森先輩。うち、すぐそこだから、涼んでいく? 両親はいま仕事でいないけど、兄貴がいる。兄貴のこと知ってる? 成瀬葵っていって、時海の生徒会長なんだけど」
「うん、知ってる」
 というより、知らない生徒などいない。

 だって、彼は全校生徒の憧れの的。
 頭脳明晰にしてスポーツ万能。

 男の人なのに『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』なんて讃えられてる、超イケメンだもの。