てのひらは君のため〜クールな年下男子と始める、甘い恋〜

 建物の隅っこでうずくまっている間、数人が私の前を通り過ぎて行った。
 ぼうっと住宅街を眺めていると、足音が聞こえた。
 これまでと違って、その足音は近づいてくる。

「大丈夫?」
 声に顔を上げると、美少年が立っていた。

 長い睫毛に整った顔立ち。
 せっかくの美少年なのに、その眼光が刃物のように鋭く見えてしまうのは、彼が感情を表に出さないからだろう。
 少なくとも、私は彼が笑っているところを見たことがない。

 そう――私は彼を知っている。
 時海《ときみ》高校一年三組、成瀬漣里《なるせれんり》くんだ。

 彼には(あおい)という、高校三年生のお兄さんがいる。
 彼らは時海高校を代表する美形兄弟として有名だった。
 私の親友もお兄さんのファンなんだよね。

 でも、成瀬くんは絶大な人気を誇る葵先輩とは違って、周りの生徒から敬遠されている。

 彼が入学早々、上級生――私と同じ学年の、野田という不良を殴ったからだ。

『顔はいいけど中身は最悪』『成瀬先輩が天使なら彼は悪魔』――一部の生徒からそんな酷いことを言われている彼は、じっと私を見下ろしている。

 彼の左腕にはビニール袋が下がっていた。
 中から牛乳パックが覗いている。
 どうやら買い物帰りらしい。