クールな年下男子と、甘い恋を。

「…………」
 漣里くんは何も言わなかった。
 表情も動かない。
 ただ、私に向けていた視線をテーブルに落とした。
 反応としてはそれだけだった。

「……驚いたな」
 沈黙を破って、葵先輩が声を上げた。

「良かったね、漣里。真白ちゃんは口さがない人たちとは違うみたいだよ? 噂に流されず、ちゃんとありのままの漣里を見て判断してくれた。彼女には何があったか話してもいいんじゃない?」
 漣里くんは無言のままアイスを食べている。

 これはOKなのか、ダメなのか。
 付き合いの短い私にはわからなかったけど、葵先輩は笑った。

「よさそうだから、特別に打ち明けるね」
 葵先輩は漣里くんから私に視線を移した。
 笑顔が消えて、眼鏡の奥の瞳が真剣な光を帯びる。

「あれはいじめの現場を目撃したからなんだよ。漣里はたまたま下校途中に暴行の現場を目撃して、黙っていられずに割って入った。最初は言葉で止めようとしたけど、相手は聞く耳を持たずに殴りかかってきた。だから殴り返しただけ」
「それなら正当防衛ですよね?」
 これが真相なら、学校で流れている悪評は大間違いだ。

 生徒の口から口へと伝えられていくうちに、噂に尾ひれどころか背びれや胸びれまでついてしまったのだろう。