あと一分、君を呼び止めていたならば。

 「もう流伊なんて大っ嫌い!」
「マジでごめんって」
「、、別れてくれない?」
「は?」
「もう無理なの。わたしがいくら楽しみにして準備したってどうせ忘れて遊んでるんでしょ?そんなの我慢できない。、、さようなら」
ドアが閉まる音だけがやけに大きく聞こえる。優奈が出ていった部屋は物はあるのに何もないような感じがした。
「は、?」
俺がやらかした。今日は付き合ってちょうど一年の記念日だったのに、忘れて幼馴染で親友の斗真とあほみたいにゲームして騒いでいた。デートの約束までしていたのに。自分の情けなさにため息しか出てこない。
(キキーーッドン!!)
にぶい音が家の外で響く。もしかして、と思い家を出る。絶対ちがう、絶対―。
「優奈!!?」
道路に優奈が血だらけになって倒れていた。
「おいっ!優奈っ!何回でも謝るからっ!頼むからっ!目を開けてくれよっ!!」

 しばらくしてけたたましいサイレンの音とともに救急車が来て、優奈は運ばれていった。隣の部屋に住んでいる人が俺を見て、付き添いとして救急車に乗ってくれた。

 優奈は高校一年生のときに両親を亡くしている。それでも周りに優しく、温かく接していた。そんな優奈を見て、あんなふうに強くなりたい、と思った。
「優奈のことは俺が絶対守るから」
「!ふふ、ありがとう。頼りになるね」
絶対守る、と約束したときのことを思い出す。約束を忘れないようにすることも、破ることも、もうできないのだろうか。