王子の執務室を出たあと、アルベルトはいつものようにマレーヌを見下すように見て、言ってきた。
「どうやら、この話はなかったことになりそうだな」
そうですねとマレーヌは、ホッとして微笑む。
「まあ、よく考えたら、お前はあまり、お薦め商品ではないよな」
そう切って捨てられるが。
その口調も冷ややかな瞳も好きだな、とマレーヌは思っていた。
「それで……」
それで? とマレーヌが見つめると、
「それで」
ともう一度言ったあと、アルベルトは咳払いした。
「王子との婚姻が上手くいかなかった娘は、礼儀として、他の有力な貴族に紹介するという習慣が我が国にはあるのだが」
「そうなのですか?」
「ルーベント公爵の連れてきた娘は、その制度、断ったようなのだが」
レティシアは、もう別の自分の道を見つけたのかもしれないな、と思ったとき、アルベルトはマレーヌを見下ろし言った。
「このような娘を他の者に押し付けるのもあれだ」
そこで、アルベルトは沈黙する。
期待と緊張でバクバクしながら見上げるマレーヌをいつものように蔑むように見ながら、アルベルトは言った。



