「よかったな、お前、片付く先が決まって」
しかも王子様だぞ~、とアルベルトが帰ったあと、兄たちは嬉しそうにマレーヌに言ってきた。
「片付くって言われ方、嫌なんですけど……」
「そうか。
じゃあ、言い換えてやろう。
この国の王子が片付いてよかったな~」
「ちょっと、御無礼よ」
と言いながら母は笑っている。
「なにが悪い。
男と女の立場を入れ替えただけですよ、母上」
と兄は言うが。
いや、問題なのは相手がこの国の第一王子というところではなかろうか、とマレーヌは思っていた。
「私、お嫁には行きたくありません」
そうマレーヌは言ってみたが、家族全員に反対される。
「お前、シルヴァーナのようになったらどうするつもりだっ」
シルヴァーナはマレーヌより五つ年上なのだが。
この時代のこの国では、そろそろ行き遅れと呼ばれる年頃だった。
「私がなんですって?」
王立図書館では館長付きの秘書をやっているシルヴァーナが戻ってきた。
コートをメイドに渡しながら言う。
「聞いたわ、マレーヌ。
エヴァンの許に嫁ぐことになったのね。
可哀想に。
エヴァンは悪い人じゃないけど、あなた、もうなにも自由にならないわよ」
本と自由を愛するシルヴァーナにとって、わずらわしい付き合いの増える王子妃というのは、好ましい立場ではないようだった。



