冷徹宰相様の嫁探し

 王子の寝所に忍び込もうとした自分を責めているのかと思ったが。

 いや、おそらく、冷たい瞳が素敵な宰相様、とやらが自分の腕をつかんでいるせいだろう。

 いやいやいや、宰相様より、あんたの視線の方が怖いからっ、
と怯えたレティシアは二度と王子に色仕掛けで迫ることはなかった。

 マレーヌが別の娘に退けられないよう。
 暇さえあれば、アルベルトは王子を見張っているようだった。

 そして、そのアルベルトをマレーヌが見張っている。

 怖すぎる。

 ……宰相様ではなく、マレーヌがっ。

 そもそも、あんた、あの夜中にどっちから現れたのよっ、とレティシアは思っていた。

 やはり、王宮なんて、恐ろしい場所。

 私のような貧乏男爵の娘が来るようなところじゃなかったんだわっ、
と思い知ったレティシアは、ある日、気がついた。

 王子を見張っているアルベルトを見張っているマレーヌをさらに、屈強な戦士のような従者が見張っている。

 怖いっ。
 なにかやったら、全員に襲いかかられそうだっ。

 アルベルトも王子も、マレーヌもルーベント公爵もマテオも知らないところで。

 密かにレティシアは王子妃になることを断念していた。