冷徹宰相様の嫁探し

 たまたまなのか。
 いつも見張っているのか。

 自分やルーベント公爵がなにかしそうな気配を感じてなのかは、わからないが。

 ともかく、深夜にもかかわらず、アルベルトはそこにいた。

「なにをしている……」

 その暗い瞳に見つめられた瞬間、レティシアは自分が凍えるような北の大地にある監獄に入れられた心地がした。

 処刑されて死ぬより、凍死する方が多いと噂の監獄だ。

 現実に心が戻ったとき、なんか今、三十年くらい経過した気がする、と思ったレティシアはおのれの頬を押さえてみた。

 今のアルベルトのひと睨みで、急激に美貌が低下した気がしたからだ。

「な、なんでもございません、宰相様。
 ちょっと部屋を間違えまして」
と自分でもそんな莫迦な、という言い訳をしながら、頭を下げたとき、別の冷たい視線を感じた。

 振り向くと、マレーヌが廊下の角からこちらを覗いていた。

 いつもの愛らしい面影はそこにはない。

 監獄で凍死するのを待つどころか。

 凍った湖に今すぐ突き落とし、凍死させるぞ、くらいの迫力ある表情だった。