「マレーヌ嬢は頻繁に王子の元を訪れ、親交を深めているようだぞ。お前も出遅れるでないぞ」
そうルーベント公爵に急かされたレティシアは、衛兵に金を渡して、密かに王宮に入り込み、王子の寝所に忍び込もうとしていた。
確かにこのままでは、王子の心はマレーヌに傾いてしまいそうだと思ったからだ。
マレーヌ自身は王子の妃になりたいわけではないようだが。
宰相は強く推しているし。
マレーヌが妃の座を拒否しても、宰相か他の大貴族が、第二、第三の妃候補を連れてくるだろう。
そもそも、自分のような、美貌と魅力的な肉体以外にはなにもない貧乏男爵の娘など、まともな方法では他の御令嬢には勝てそうにもない。
そんなことを思いながら、そっと王子の寝所に近づこうとした。
さすがに寝所を守る衛兵の買収はできなかったが、王宮の侍女を買収して、騒ぎを起こし、そちらに向かわせたのだ。
だが、すぐに代わりの衛兵が来るに違いない。
今しかないっ、と寝所の扉を開けようとしたレティシアの手を誰かがつかんだ。
がっしりとした腕。
剣術により、鍛え上げられたと思しき鋼のような強さを持つ指。
宰相アルベルトだった。



