忙しい仕事の合間を縫って、アルベルトはマレーヌを屋敷まで送っていった。
自分が王子妃にと推挙した娘だ。
彼女を安全に送り届ける義務があると思っていたからだ。
公爵家まで彼女を送り、彼女の両親に挨拶したあとで、馬車に乗る。
窓の外を眺めながら、今のマレーヌとのやりとりを思い出していた。
なにが化け猫がはがれるだ……。
アルベルトは先ほどまで、マレーヌが座っていた場所を見ながら、ひとり妄想してみた。
巨大な化け猫を背負ったマレーヌが自分と向かいあって座っているところを。
思わず吹き出した自分を、隣に座っていた従者の少年、トッドが、ええっ? 今、笑いましたっ? という顔で見る。
自分が笑うなどと滅多にないことだからだ。
アルベルトは咳払いして誤魔化した。
いや、誤魔化せていたかは知らないのだが――。



