外に出ると、案の定、アルベルトが待っていた。
自分がここに来たことを誰からか聞いたのだろうな、とマレーヌは思う。
「マレーヌよ。
王子の部屋に日参するとは偉く乗り気になったものだな。
話はまとまったか」
「はい。
お互い、特に好みでない、ということでまとまりました」
とマレーヌが言うと、アルベルトは溜息をつく。
「お前とお前の家がちょうど良いのに。
早く決めねば、野心家な連中が王子におのが娘をあてがおうと策謀を巡らせはじめてしまう」
いや、あなたにとって、ちょうど良くとも、私には、なにもちょうど良くないのですが――。
中で話していたことを聞いていたのか、いないのか。
アルベルトは、
「ちょっとここでおとなしくしておれば、お前もお前の家も安泰だと言うのに何故だ」
と王子と同じことを言ってくる。
「でも、それが難しいと思うのです」
とマレーヌは溜息をついた。
「私なんて、最初はおとなしくしていても、すぐに化け猫がはがれてしまいます、宰相様」
「……何故、化け猫がはがれる」
化けの皮がはがれるか。
かぶっていた猫がはがれるのではないのか。
お前には何かとり憑いているのか、と言われてしまう。
ちょっとした言い間違いだったのだが、これ幸いと、
「はい。
ですから私のようなものは王子の妃には……」
と言いかけて、マレーヌは気がついた。
化け猫憑きの娘なんて。
それで王子様との話が破談になっても、宰相様ももらってはくださらないのでは……っ。
はは、なんでもありません、とマレーヌは慌てて誤魔化した。



