余命3ヶ月のキミ

次の日。
いつもなら――
「湊〜!」って元気な声が聞こえるはずだった。
でも、その日は違った。
湊(心の声)
「……来ない」
時計を見る。
もう昼前。
(寝てるのか…?)
そう思って、陽菜の病室へ向かう。
ガラッ
ドアを開けた瞬間――
看護師「少し下がってください!」
医師「脈が弱い、酸素上げて!」
バタバタとした空気。
白いカーテンの向こう。
湊「……え」
足が止まる。
一瞬、誰のことか分からなかった。
でも――
見えた。
ベッドの上で横になっているのは、
陽菜だった。
昨日まで、笑っていた顔。
手をつないでいた温もり。
それが、遠く感じる。
湊(心の声)
「……なんで」
看護師「ご家族の方は…!」
誰かが走っていく。
湊はその場に立ち尽くすことしかできなかった。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
やがて――
医師「……落ち着きました」
張りつめていた空気が、少しだけ緩む。
湊はゆっくり、部屋の中に入る。
陽菜はベッドで眠っていた。
顔色は少し悪いけど、
呼吸は落ち着いている。
湊「……陽菜」
小さく名前を呼ぶ。
反応はない。
湊(心の声)
「……これが現実かよ」
“あと3ヶ月”
その言葉が、頭の中で何度も響く。
昨日までの“普通”が、
一瞬で壊れた気がした。
湊は、そっと椅子に座る。
そして――
眠っている陽菜の手を、握った。
冷たい。
昨日より、ずっと。
湊(心の声)
「……怖えよ」
「いなくなるかもしれない」
その実感が、初めて押し寄せる。
しばらくして――
陽菜「……ん」
小さく、声がした。
湊「……!」
顔を上げる。
陽菜が、ゆっくり目を開ける。
陽菜「……湊?」
湊「……ああ」
陽菜「なんでそんな顔してるの?」
少しだけ笑う。
湊「……別に」
陽菜「……もしかして」
陽菜「心配してくれた?」
湊は一瞬黙って――
湊「……当たり前だろ」
陽菜は、少し驚いた顔をして
そして、ふわっと笑った。
陽菜「そっか」
陽菜「なんか嬉しいな」
その言葉が、
胸に刺さる。
湊(心の声)
「……嬉しい?」
「俺は――」
「怖くて仕方ないのに」
陽菜「ごめんね、びっくりさせて」
湊「……無理すんなよ」
陽菜「大丈夫だよ〜!」
そう言って笑う。
でも――
その笑顔は、少し弱かった。
湊(心の声)
「……嘘つけ」
「全然、大丈夫じゃないだろ」
でもその言葉は、
口にできなかった。
陽菜「ねぇ」
湊「ん?」
陽菜「今日も一緒にいよ?」
その一言。
“当たり前みたいな願い”
湊は、強く手を握り返して――
湊「……ああ」
湊(心の声)
「……守る」
「あと3ヶ月でも」
「絶対、全部一緒にいる」
でもその決意は――
まだ、誰にも言えない。