余命3ヶ月のキミ

次の日。
朝から、湊は落ち着かなかった。
湊(心の声)
「……全部やるって言ったけど」
「何からやればいいんだよ…」
コンコン
陽菜「湊〜!」
湊「……どうぞ」
ガラッ
ドアが開いた瞬間――
湊は固まった。
陽菜は、いつものパジャマじゃなくて
少しだけ可愛い私服姿だった。
湊「……何それ」
陽菜「えへへ、どう?」
くるっと回る。
陽菜「“デートっぽいこと”したくて!」
湊「はぁ!?」
陽菜「だってリストにあるもん!」
ノートを開く。
そこには――
『好きな人とデートっぽいことをする』
湊「……“好きな人”って誰だよ」
思わず聞いてしまう。
陽菜は一瞬考えて――
にこっと笑った。
陽菜「今は、湊でいいや!」
湊「“いいや”ってなんだよ…」
でも、なぜか少しだけドキッとする。
陽菜「今日はね!」
湊「?」
陽菜「院内デートするの!」
湊「……は?」
陽菜「屋上行って〜、売店行って〜、ジュース買って〜」
指を折りながら楽しそうに話す。
陽菜「最後は…」
少しだけ照れながら、
陽菜「手、つないで帰る!」
湊「……それもリストか」
陽菜「うん!」
湊は少し黙ってから――
湊「……いいよ」
陽菜「ほんと!?」
湊「どうせやるなら、ちゃんとやる」
陽菜「やったー!」
その笑顔に――
また心が揺れる。
――屋上
風が吹く。
空は青くて、どこまでも広い。
陽菜「ねぇ湊!」
湊「ん?」
陽菜「こういうの、青春って感じしない?」
湊「……まあな」
陽菜「いいなぁ、普通の学校行きたかったなぁ」
その言葉に、少しだけ引っかかる。
でも――
湊は何も言えなかった。
――売店
陽菜「どれにする?」
湊「なんでもいい」
陽菜「ダメ!デートなんだから選んで!」
湊「……じゃあこれ」
陽菜「同じのにしよ!」
二人で同じジュースを持って、レジへ。
それだけなのに――
なぜか特別だった。
――帰り道(廊下)
夕方。
窓からオレンジ色の光が差し込む。
陽菜「……ねぇ」
湊「ん?」
陽菜は、少しだけ緊張した顔で
そっと手を差し出す。
陽菜「……最後」
「約束のやつ」
湊は、その手を見る。
細くて、少し冷たい手。
湊(心の声)
「……3ヶ月」
その言葉が、頭をよぎる。
でも――
湊「……ほら」
自分から、手を取った。
陽菜「!」
一瞬、驚いた顔。
そして――
ふわっと、嬉しそうに笑う。
陽菜「……あったかい」
その一言が、
胸に深く刺さる。
湊(心の声)
「……やばい」
「これ以上、好きになったら」
でも――
手は離せなかった。
夕焼けの廊下を
二人でゆっくり歩く。
陽菜「ねぇ湊」
湊「なに」
陽菜「今日、すっごく楽しかった!」
湊「……ああ」
陽菜「また、明日もやろ?」
湊は少しだけ間を空けて――
湊「……毎日でもいい」
陽菜「え?」
湊「全部、やるって言っただろ」
陽菜は一瞬固まって――
陽菜「……うん!」
ぎゅっと、手を握り返した。
湊(心の声)
「……あと3ヶ月」
「なら――」
「全部、幸せにしてやる」
でもその決意が、
どれだけ苦しくなるのか――
まだ知らない。