余命3ヶ月のキミ

朝。
カーテンの隙間から、やわらかい光が差し込む。
湊はまだベッドの上でぼんやりしていた。
湊(心の声)
「……ねむ」
昨日は陽菜とずっと話していて、少し寝不足だった。
コンコン
ドアをノックする音。
――「失礼しまーす…」
ガラッ
ドアが開く。
でも――
入ってきたのは看護師じゃなかった。
陽菜「おはよー!」
湊「……は?」
一瞬、思考が止まる。
パジャマ姿で、にこにこしている陽菜が立っていた。
湊「なんでいるの」
陽菜「遊びに来た!」
湊「ここ俺の部屋なんだけど」
陽菜「知ってるよ〜」
当たり前のように言って、スタスタと中に入ってくる。
陽菜「うわ、男の子の部屋って感じ!」
湊「病室にそんな差あるか?」
陽菜「あるある!」
ベッドの横の椅子に座る陽菜。
完全にくつろいでいる。
湊「……朝から元気すぎ」
陽菜「だって楽しみだったもん」
湊「何が」
陽菜「湊の部屋に来るの!」
満面の笑み。
湊は少しだけ視線をそらした。
湊「……物好きだな」
陽菜「えー?嬉しくないの?」
湊「……別に」
でも――
ちょっとだけ、嬉しかった。
陽菜「ねぇねぇ、朝ごはんもう食べた?」
湊「まだ」
陽菜「じゃあ一緒に食べよ!」
ちょうどその時、トレーを持った看護師が入ってくる。
看護師「あら?お友達?」
陽菜「はい!一緒に食べていいですか?」
看護師「いいわよ、騒ぎすぎないでね」
陽菜「やった!」
湊のベッドに身を乗り出す。
距離が近い。
湊「……近い」
陽菜「え?」
湊「なんでもない」
二人で並んで朝ごはんを食べる。
同じ時間、同じ場所。
それだけなのに――
昨日より、少しだけ特別に感じた。
陽菜「ねぇ湊」
湊「ん?」
陽菜「こういうのさ」
湊「?」
陽菜「普通の中学生みたいで、いいね」
少しだけ、小さな声。
湊は一瞬、言葉に詰まる。
湊「……普通だろ」
陽菜「ううん、違うよ」
微笑む陽菜。
でもその目は、どこか遠くを見ていた。
陽菜「だからさ」
湊「?」
陽菜「いっぱい“普通のこと”、したいなって思って」
湊「……」
その言葉が、なぜか心に引っかかった。
でも――
理由は分からない。
陽菜「今日もさ、一緒に過ごそ!」
湊「……また来るのかよ」
陽菜「ダメ?」
少しだけ不安そうな顔。
湊はため息をついて――
湊「……別に、いいけど」
陽菜「ほんと!?やったー!」
一瞬で笑顔に戻る。
その笑顔に――
また少し、心が動く。
湊(心の声)
「……なんなんだよ、この子」
「調子狂う」
でも――
「嫌じゃない」
窓の外は、よく晴れていた。