次の日。
湊が病室に行くと――
陽菜は、ベッドの上でノートを開いていた。
陽菜「湊、おはよ」
少し弱いけど、ちゃんと笑っている。
湊「……起きてていいのかよ」
陽菜「今日はね、ちょっと特別」
そう言って、ノートを見せる。
『やりたいことリスト』
ほとんどの項目に、線が引かれている。
残っているのは――
『夜の遊園地に行く』
『花火を見る』
『好きな人と帰る』
湊「……」
陽菜「ねぇ」
湊「ん?」
陽菜「これ、やりたい」
指さしたのは――
『花火を見る』
湊「……花火?」
陽菜「うん」
陽菜「最後に、ちゃんと見たいなって」
“最後”という言葉。
湊は一瞬だけ顔を歪める。
湊「……病院じゃ無理だろ」
陽菜「ううん」
にこっと笑う。
陽菜「屋上なら見えるかも」
湊は少し黙ってから――
湊「……今日か?」
陽菜「うん」
陽菜「今日がいい」
その言葉に、
迷いはなかった。
湊(心の声)
「……分かってる」
「もう時間がないって」
湊「……分かった」
陽菜「ほんと?」
湊「ああ」
陽菜は嬉しそうに笑って――
陽菜「ありがとう」
その笑顔が、
少しだけ弱く見えた。
――夜
病院は静まり返っている。
湊「……行けるか?」
陽菜「うん」
でも立ち上がると、
少しふらつく。
湊「おい」
すぐに支える。
陽菜「ありがと」
そのまま、肩を貸して
ゆっくり歩く。
階段。
一段一段、ゆっくり。
陽菜「……はぁ、はぁ…」
湊「無理すんな」
陽菜「……大丈夫」
でもその声は、明らかに苦しそうだった。
それでも――
陽菜は止まらない。
やっと屋上に着く。
夜の風が吹く。
陽菜「……ついた」
二人でフェンスの前に座る。
空は暗くて、
街の明かりが遠くに見える。
しばらくして――
ドンッ
夜空に光が広がる。
花火。
陽菜「……わぁ」
小さな声。
でも、心からの声。
次々と打ち上がる光。
赤、青、金色。
夜空に咲いては、消えていく。
陽菜「きれい…」
湊「……ああ」
陽菜は、そっと湊の肩に寄りかかる。
湊「……重くないか」
陽菜「大丈夫」
そして、小さくつぶやく。
陽菜「ねぇ湊」
湊「ん?」
陽菜「私ね」
一発、大きな花火が上がる。
陽菜「もう、満足かも」
湊「……は?」
陽菜「だってさ」
陽菜「やりたいこと、いっぱいできたもん」
ノートのこと。
写真のこと。
手をつないだこと。
陽菜「全部、湊とだったし」
湊の喉が、詰まる。
湊「……まだだろ」
陽菜「え?」
湊「……まだ終わってねぇ」
声が少し震える。
湊「“好きな人と帰る”が残ってる」
陽菜は少し驚いて――
そして、ふわっと笑った。
陽菜「……そっか」
花火の光が、二人を照らす。
陽菜「じゃあさ」
陽菜は、そっと手を伸ばして
湊の手を握る。
陽菜「帰ろっか」
その言葉が――
とても優しくて
とても切なかった。
湊は、その手を強く握り返す。
湊(心の声)
「……まだ終わらせない」
「絶対に」
でも――
花火は、少しずつ終わりに近づいていた。
湊が病室に行くと――
陽菜は、ベッドの上でノートを開いていた。
陽菜「湊、おはよ」
少し弱いけど、ちゃんと笑っている。
湊「……起きてていいのかよ」
陽菜「今日はね、ちょっと特別」
そう言って、ノートを見せる。
『やりたいことリスト』
ほとんどの項目に、線が引かれている。
残っているのは――
『夜の遊園地に行く』
『花火を見る』
『好きな人と帰る』
湊「……」
陽菜「ねぇ」
湊「ん?」
陽菜「これ、やりたい」
指さしたのは――
『花火を見る』
湊「……花火?」
陽菜「うん」
陽菜「最後に、ちゃんと見たいなって」
“最後”という言葉。
湊は一瞬だけ顔を歪める。
湊「……病院じゃ無理だろ」
陽菜「ううん」
にこっと笑う。
陽菜「屋上なら見えるかも」
湊は少し黙ってから――
湊「……今日か?」
陽菜「うん」
陽菜「今日がいい」
その言葉に、
迷いはなかった。
湊(心の声)
「……分かってる」
「もう時間がないって」
湊「……分かった」
陽菜「ほんと?」
湊「ああ」
陽菜は嬉しそうに笑って――
陽菜「ありがとう」
その笑顔が、
少しだけ弱く見えた。
――夜
病院は静まり返っている。
湊「……行けるか?」
陽菜「うん」
でも立ち上がると、
少しふらつく。
湊「おい」
すぐに支える。
陽菜「ありがと」
そのまま、肩を貸して
ゆっくり歩く。
階段。
一段一段、ゆっくり。
陽菜「……はぁ、はぁ…」
湊「無理すんな」
陽菜「……大丈夫」
でもその声は、明らかに苦しそうだった。
それでも――
陽菜は止まらない。
やっと屋上に着く。
夜の風が吹く。
陽菜「……ついた」
二人でフェンスの前に座る。
空は暗くて、
街の明かりが遠くに見える。
しばらくして――
ドンッ
夜空に光が広がる。
花火。
陽菜「……わぁ」
小さな声。
でも、心からの声。
次々と打ち上がる光。
赤、青、金色。
夜空に咲いては、消えていく。
陽菜「きれい…」
湊「……ああ」
陽菜は、そっと湊の肩に寄りかかる。
湊「……重くないか」
陽菜「大丈夫」
そして、小さくつぶやく。
陽菜「ねぇ湊」
湊「ん?」
陽菜「私ね」
一発、大きな花火が上がる。
陽菜「もう、満足かも」
湊「……は?」
陽菜「だってさ」
陽菜「やりたいこと、いっぱいできたもん」
ノートのこと。
写真のこと。
手をつないだこと。
陽菜「全部、湊とだったし」
湊の喉が、詰まる。
湊「……まだだろ」
陽菜「え?」
湊「……まだ終わってねぇ」
声が少し震える。
湊「“好きな人と帰る”が残ってる」
陽菜は少し驚いて――
そして、ふわっと笑った。
陽菜「……そっか」
花火の光が、二人を照らす。
陽菜「じゃあさ」
陽菜は、そっと手を伸ばして
湊の手を握る。
陽菜「帰ろっか」
その言葉が――
とても優しくて
とても切なかった。
湊は、その手を強く握り返す。
湊(心の声)
「……まだ終わらせない」
「絶対に」
でも――
花火は、少しずつ終わりに近づいていた。


