余命3ヶ月のキミ

白い天井。
消毒液の匂い。
静かな心電図の音。
ここは、病院。
少年・湊は、窓の外をぼんやりと見つめていた。
湊(心の声)
「……つまんないな」
中学2年生。
持病の検査のため、しばらく入院することになった。
大した病気じゃない。
でも、毎日が同じ景色で、退屈だった。
その時――
ガラッ
隣の病室のドアが開く音がした。
看護師「ここが今日からのお部屋です」
明るい声。
湊はなんとなく気になって、そっと廊下をのぞく。
そこにいたのは――
ふわっとした髪の、笑顔の女の子。
少女「わぁ〜!窓ある!いいね!」
看護師「ふふ、そうですね。何かあったらすぐ呼んでくださいね」
少女「はーい!」
元気な声が廊下に響いた。
その日の午後。
湊はなんとなく、また廊下に出た。
(……さっきの子、いるかな)
隣の病室のドアは少し開いていた。
中をのぞくと――
少女がベッドの上で、ノートに何か書いている。
湊(小さく)
「……あの」
少女「!」
ぱっと顔を上げる。
少女「え、誰?」
湊「あ……えっと、隣の部屋の…」
少女「あ!さっき廊下にいた人だ!」
にこっと笑う。
その笑顔は、病院には似合わないくらい明るかった。
少女「入る?」
湊「え、いいの?」
少女「いいよいいよ〜!ひまなんだもん!」
湊は少し戸惑いながら、部屋に入る。
少女「私は陽菜(ひな)!中2!よろしくね!」
湊「……湊。俺も中2」
陽菜「同い年じゃん!やった!」
パチン、と手を叩く陽菜。
その仕草に、湊は少しだけ驚いた。
(……なんか、元気すぎる)
陽菜「湊は何で入院してるの?」
湊「検査。すぐ退院できると思うけど」
陽菜「そっかぁ〜。いいなぁ」
湊「……陽菜は?」
一瞬、間が空く。
でもすぐに、陽菜は笑った。
陽菜「ちょっと体弱くてさ〜!よく入院してるの!」
軽い口調。
でもどこか、無理してるようにも見えた。
湊「それ書いてるの何?」
陽菜「あ、これ?」
ノートを見せる。
そこには――
『やりたいことリスト』
陽菜「退院したらやりたいこと書いてるの!」
・海に行く
・制服でプリ撮る
・夜の遊園地
・好きな人作る
湊「……多いな」
陽菜「でしょ!人生楽しみたいもん!」
にこっと笑う。
その笑顔に、湊は少しドキッとした。
それから――
気づけば、毎日。
湊は陽菜の部屋に通うようになった。
陽菜「今日さ、屋上行ってみたい!」
湊「怒られるだろ」
陽菜「バレなきゃセーフ!」
湊「アウトだろ…」
でも結局、一緒にこっそり行った。
陽菜「ねぇ、風気持ちいいね!」
フェンス越しに空を見上げる陽菜。
その横顔は、どこか儚くて。
でも――
誰よりも生き生きしていた。
湊(心の声)
「……なんでだろ」
「この子といると、退屈じゃない」
陽菜「湊!」
湊「なに」
陽菜「退院してもさ、遊ぼうね!」
湊「……ああ」
陽菜「約束だよ?」
小指を差し出す。
湊「……子供かよ」
と言いながらも――
そっと指を絡めた。
その約束が――
どれほど重いものになるのか、
この時の湊は、まだ知らなかった