戴冠式当日。私は十年ぶりに公へと姿を出した。
「あれが噂の姫なのか?」「醜いと言われているが美人じゃないか」「一体どこがオーク顔なんだ」
招待客は、悪評とは違う私の容姿を目にして驚愕している。
マルティナの手によっていつも以上に美しく飾り立てられていたのだから無理もない。
イーサンを伴った私は、微笑みを浮かべて会釈した。
たったそれだけなのに、彼らの視線が集まってくるのがありありと分かった。
一兄様の戴冠式が礼拝堂で無事に終わると、大広間にて宴が開かれる。
戴冠式とは違って進行が決まってはいないため、私はたくさんの招待客と挨拶を交わした。
話してみて分かったが、今日招待された王侯貴族は皆敬意をもって接してくれている。
一日会っただけで告白してくるような人間はいない。
よって、私の呪いが発動することはまずないだろう。
そう高を括っていたのがまずかった。
「ご機嫌麗しゅうございます。ジゼル姫」
安心しきっている私の目の前に、とある男性が現れた。
それはジークハルト殿下の弟、ヘンリク殿下。
幼い頃のジークハルト殿下を彷彿とさせる顔立ちだったので一目で分かった。きっと彼が成長すると、こんな感じになるのだろう。
「醜女のオーク顔だったはずなのに魔法が解けたのですね。こんなに美しいだなんて」
「いえ呪いが解けた訳では……。ともかく、どうぞ最後までお楽しみください」
ヘンリク殿下のねっとりとした視線に危機感を覚えた私は、挨拶を済ませてその場から離れようと試みる。けれど、回り込むようにしてヘンリク殿下が私の行く手を阻んだ。



