私には三人の兄がいる。一番上の兄はこの度リンデベル王国の国王として即位するのだ。
戴冠式には国内の有力貴族はもちろん、近隣諸国の王族が招待されている。
これまでの公式行事はすべて欠席してきた。けれど、今回ばかりは王族の威信にかかわるため、そうもいかない。
お父様やお母様からは、ただ笑顔で挨拶するだけで良いと言われているものの、不安は尽きない。
戴冠式はスケジュール通りに進行していくので心配していない。
問題はその後に待っている宴だ。
私は顔を伏せると心の内を吐き出した。
「無事に終えられるかしら」
「心配は要りませんよ。何かあってもイーサン様が姫様を守ってくださいます。そうですよね、イーサン様?」
顔を上げると、いつの間にかイーサンが巡回から戻ってきていた。
考え込んでいたせいで、気づけなかった。
イーサンはこちらに近づいてくると、私の目の前で跪く。
「カラリア王国からはジークハルト殿下ではなく、弟君のヘンリク殿下が出席されると聞いていますのでご安心を。当日は呪いが発動しないように私が全力でお守りします」
イーサンはそっと私の手をすくい取ると、手の甲に誓いの口づけをする。
触れられた部分がジュッと熱くなり、全身にそれが駆け巡る。心臓の鼓動が速くなる。
嗚呼、言えない。あなたが『好き』って言えない。
好きな人が目の前にいるのに告白できないだなんて。
魔女がまだ生きているのなら、この呪いを解くよう追及したいところだ。
「当日は頼んだわよ」
イーサンに感情を悟られないよう、私はそっぽを向いて答えるしかなかった。



