姫様は好きが言えない〜オーク顔の呪いにかかっていますが好きな人がいます〜



「本日のお加減はいかがですか?」
「見れば分かるでしょ? この通り元気よ」

 私はマルティナの頬から手を離すと腰に手を当てる。
 イーサンはじっと私を見つめてから窓の外を一瞥した。

「私はいつも通り、近辺の見回りから始めます」
「ええ、よろしく。挨拶が終わったのなら下がりなさい」

 必要最低限の言葉を交わし終えると、イーサンは一礼して出ていった。
 彼の後ろ姿を見届けている私の隣で、頬をさするマルティナが苦言を呈する。


「イーサン様ったら相変わらず無愛想ですね。姫様に笑顔の一つも見せやしません。やっぱり、殿方は金髪碧眼のきらきら王子様がさいこ……」
 嗚呼、好き!!
 好き好き好き好き好き。イーサンが好きすぎるわ!!
 マルティナが講釈を垂れているけれど、そんなのどうだっていい。

 私はイーサンが好き。普段は寡黙で涼しい顔をしているけど、時折見せるくしゃりと笑った顔が好き。
 物腰は柔らかいのに、異変があったら精悍な顔つきになって任務に当たるあのギャップが堪らない。
 詰襟の騎士服に身を包んでいても、細身の身体が鍛え上げられているのは一目瞭然。

 最近は大人の甘やかな色気が増して、かっこ良さに磨きがかかった。あの朱色の瞳と目が合うと、私の心臓が悲鳴をあげる。きっと一分以上見つめられたら気絶する。確実に。