姫様は好きが言えない〜オーク顔の呪いにかかっていますが好きな人がいます〜



 最初は同情から側仕えしているだけだった。しかし、ジゼルの側に居てその考えは一変した。

 離れでひっそりと暮らしてはいるものの、ジゼルはいつも溌剌としているし、姫であることを鼻にかけず皆に平等に接している姿に好感を覚えた。そんな姿に、イーサンはいつの間にか心を奪われ、気づけば好きになっていた。

 とはいえ、彼女は王国の姫君だ。『好き』を伝えるのもおこがましいし、伝えたら彼女の呪いが発動して不幸にしてしまう。

 したがって、イーサンは時間が許す限りジゼルの側にいようと決意した。父であるロシュ辺境伯から戻ってくるよう催促の手紙が頻繁に届くようになっても無視を貫いた。
 だが、それも今日で終わりのようだ。



「ジークハルト殿下には感謝しています。あなたが諦めてくれたおかげで、私はジゼル様と結婚できるのですから。これで返事を書いていなかった父へも報告ができます」

 ジークハルトがジゼルの悪評を広めてくれた結果、自分と結ばれた。本来ならば、どこかの国の王子と政略結婚していただろう。その点に関しては感謝しかない。
 ジークハルトは眉を上げる。

「君は相当勇気があるな。いくら姫とはいっても俺には無理だ」
「ジゼル様が姫だから結婚するのではありません」

「蓼食う虫も好き好きか……。まあとにかく、おめでとうと言っておこう。だが、その結婚式に俺は参加したくない。招待状が届いた暁には、今度こそ弟を寄越そう。約束する」
「ええ、その方が殿下の身のためです。あなたのような高貴な汚物(ひと)にお見せするわけにはいきません。後悔しますから、絶対出席なさいませんように」

 約束は違えないというように力強く頷くジークハルト。

(私の大事なジゼル様を、あなたの視界に入れなくて済むのなら嬉しい限りです)
 イーサンは純白のドレスに身を包む美しいジゼルを想像して、にっこりと微笑んだ。