姫様は好きが言えない〜オーク顔の呪いにかかっていますが好きな人がいます〜



 ◇

 ジゼルを離れの部屋まで送った後、イーサンはすぐに踵を返してある人物を探した。
 その人物は中庭の木の陰で貴婦人に甘言を吐いている。相手の方も満更ではないようだ。
 イーサンは迷うことなく話しかけた。

「素敵な夜をお過ごしのようですね。ヘンリク殿下」
 相手の貴婦人は小さな悲鳴を上げた。慌ててその場から離れていく。


 しばらくして、木の陰からヘンリクが現れた。
 唇近くに貴婦人の口紅がついている。二人がお楽しみ中だったのは明らかだった。
(なんてはしたない)

 ヘンリクのだらしなさに片眉をピクリと動かす。軽蔑すると同時に、こんな男がジゼルを苦しめたのだと改めて実感し、怒りが湧いた。

 対して、ヘンリクに悪びれた様子はない。ただ楽しい時間に水を差されて不満そうにしている。


「君は確かジゼル姫の護衛騎士だっけ? あんな醜女の護衛だなんて可哀想に。貧乏くじを引かされた君に心底同情するよ。愛でる花は美しいものに限る。そう思うだろう?」

 ヘンリクはジゼルの結婚発表の場にはいなかった。
 ずっとこの中庭で貴婦人とよろしくやっていたのだから無理もない。
 イーサンは朱色の瞳をすっと細めた。