姫様は好きが言えない〜オーク顔の呪いにかかっていますが好きな人がいます〜



「これ以上私を煽るのはやめてください。ジゼル様?」
 こつんとイーサンの額が私の額に触れる。
「えっと……」
 自分でも分かるくらい、私の顔に熱が集中していく。

 まさか好きな人と両想いになっただけでなく、キスまでするなんて想像もしていなかった。幸せすぎてこれは夢じゃないか不安になるくらいだ。
 やがて、夢見心地だった私は我に返った。


「イ、イーサン、怪我してない?」
 ふと、長い牙がイーサンの顔を傷つけはしなかったか心配になる。見る限りどこにも怪我はないようだが、気をつけないといけない。

 私は自分の口元に手をやる。すると、あるはずの牙がどこにもなかった。
 驚いてイーサンを見ると、彼が朱色の瞳を細める。

「両想いで告白し合うと呪いは解けるみたいですよ。今のジゼル様は私がよく知るいつもの可愛らしいジゼル様です」
「……も、戻っているなら教えなさいよ」
 唇を尖らす私を見てイーサンが困った表情で首後ろに手を置く。


「お伝えしたかったのですが、ジゼル様が『好き』を連発するので、機会を逃してしまいました」
 要するに、私が告白した段階でオーク顔の呪いは解けていた。
 もう私が『好き』と口にしても、あの醜いオーク顔には二度とならないのだ。

 呪いが解けて嬉しさが込み上げてくると同時に、宴がまだ開かれていることを思い出す。

 リンデベル王国の新しい君主となった一兄様の権威を示すため、今夜は大事な客人ばかりを招いている。彼らとの関係を深めていく必要があるのに、私の醜聞で宴は台なしになった。このまま終わらせる訳にはいかない。