姫様は好きが言えない〜オーク顔の呪いにかかっていますが好きな人がいます〜



 恐る恐る顔を覆っているマントを取って、池の水で顔を確認する。
 水面に浮かび上がっているのは口から長い牙を生やし、退紅色の肌に大きな豚鼻のオーク顔だった。

 私の瞳からポロリと涙が零れ落ちる。
 終わった。私の恋はあっけなく終わった。告白する勇気もなかったけれど、こんな醜い顔見られてこの恋を終えることだけはしたくなかったのに。

 顔を両手で覆ってさめざめと泣いていたら、誰かがこちらにやって来る。



「ジゼル様」
 イーサンの声に私は肩を揺らした。わざわざ追いかけて来てくれたことが嬉しくて心が高鳴る。
 けれど、これはあくまで護衛騎士の仕事として追いかけてくれただけだ。
 そう思った途端、私は余計に惨めな気持ちになった。

「急に走ってごめんなさい。イーサンもこんな主人に仕えて大変よね。お父様や一兄様には部屋に戻ったと伝えて。それが終わったらあなたも休んで良いわ」

 泣いている顔を見られないように服の袖で涙を拭く。
 私はさっとその場から立ち上がった。
 これ以上同じ空間にいるのが耐えがたい。

「ジゼル様」
 イーサンはもう一度私の名前を呼ぶ。
 続いて彼は私の手首を掴み、私に正面を向かせた。
 イーサンの朱色の瞳と目が合う。自分の顔を恥じた私は咄嗟に目を逸らした。