リンデベル王国は大国と渡り歩くほどの力を持つ、中規模国家である。
始祖を始めとした、歴代国王たちの完璧無欠の手腕によって発展を遂げたその国は、周辺諸国からも一目置かれた存在となっていた。
王室は男系で、生まれてくる子供は皆男の子だった。それが現国王になって、ようやく可愛らしい女の子が誕生した。
王室も国民も姫の誕生を大いに喜んだ。
父親譲りの菫色の瞳に、母親譲りの金色の髪と目鼻立ちのはっきりした顔。
周りからは将来、周辺諸国一の美姫になると称されていた。
蝶よ花よと大切に育てられた姫はすくすくと成長し、誰からも愛される存在となった。
――とある事件が起きるまでは。
それは姫が八歳の時、婚約候補の一人だった隣国カラリア王国の王太子・ジークハルト殿下が挨拶に来た時のこと。
三つ年上だったジークハルト殿下は、姫の愛らしい容姿を一目見て恋に落ちた。
一週間かけて親交を深めた彼は、姫の婚約者となるために真っ赤な薔薇の花束を携えて跪く。
『好きです。僕と将来結婚してくれませんか?』
すると、ジークハルト殿下から愛の告白を受けた姫の顔に変化が起きる。
口からは長い牙が生え、白い肌は退紅色に、そして小さな鼻は大きな豚鼻へと変化したのだ。



