「こんにちは」
お葬式の日以来の、大きな扉にそっと手をかける。
インターホンを押してから、しばらく間があった。
やがてリビングの扉が開き、のそのそと部屋着姿の男性が顔を出す。
以前、港で見かけたときの、生き生きとした姿はそこになかった。
「汐莉ちゃん、いらっしゃい」
弱々しく笑ったその顔に、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
泣きたいのは、きっとこの人のほうなのに。
それでも私を気遣うように浮かべられた笑みに、思わずこちらの目の奥が熱くなった。
仏壇の前には、白い花が静かに揺れていた。
線香の煙が、ゆらゆらと細く伸びている。
小さな仏壇に手を合わせていると、翼のお父さんがお茶をいれて持ってきてくれた。
お葬式の日と同じ湯呑みに、胸がぎゅっと詰まる。
「来てくれてありがとうね。翼も喜んでいると思う」
仏壇の周りにはたくさんの翼の写真があった。
どの写真も笑顔で、友達と写っている写真がたくさん。
そして、その隣には、若くてきれいなショートカットの女性の写真があった。
柔らかく笑っていて、翼にどこか似ている。
「あの……翼のお母さんって……」
恐る恐る声をかけると、翼のお父さんはゆっくり顔を上げて、写真に目を向ける。
「……ああ」
低く、かすれた声だった。
「翼を産んだときにな。もともと、体が弱い人で」
それだけ言って、言葉は続かなかった。
荒れた大きな手が、膝の上でぎゅっと握られる。
お葬式の日以来の、大きな扉にそっと手をかける。
インターホンを押してから、しばらく間があった。
やがてリビングの扉が開き、のそのそと部屋着姿の男性が顔を出す。
以前、港で見かけたときの、生き生きとした姿はそこになかった。
「汐莉ちゃん、いらっしゃい」
弱々しく笑ったその顔に、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
泣きたいのは、きっとこの人のほうなのに。
それでも私を気遣うように浮かべられた笑みに、思わずこちらの目の奥が熱くなった。
仏壇の前には、白い花が静かに揺れていた。
線香の煙が、ゆらゆらと細く伸びている。
小さな仏壇に手を合わせていると、翼のお父さんがお茶をいれて持ってきてくれた。
お葬式の日と同じ湯呑みに、胸がぎゅっと詰まる。
「来てくれてありがとうね。翼も喜んでいると思う」
仏壇の周りにはたくさんの翼の写真があった。
どの写真も笑顔で、友達と写っている写真がたくさん。
そして、その隣には、若くてきれいなショートカットの女性の写真があった。
柔らかく笑っていて、翼にどこか似ている。
「あの……翼のお母さんって……」
恐る恐る声をかけると、翼のお父さんはゆっくり顔を上げて、写真に目を向ける。
「……ああ」
低く、かすれた声だった。
「翼を産んだときにな。もともと、体が弱い人で」
それだけ言って、言葉は続かなかった。
荒れた大きな手が、膝の上でぎゅっと握られる。



