その日の夜、私は両親に連れられて、翼の家へ向かった。
開け放たれた玄関に近づくと、ざわざわとした声と、線香の匂いが混じって流れてくる。
「水城さん。ありがとうございます」
「この度はご愁傷様です」
翼のお父さんと、うちのお父さんのやり取り。
互いに深く頭を下げるその動きが、やけにゆっくりに見えた。
「汐莉ちゃんも……ありがとう。翼と、よく一緒にいてくれたよね」
私は、小さく頭を下げることしかできなかった。
いつもは薄着で、港でもひときわ目立っていた翼のお父さん。
見慣れない真っ黒のスーツ姿は、全く別の人みたいに思えた。
靴を脱いで上がると、畳の部屋には人がぎっしりと集まっていた。
「水城さん。こっちこっち」
近所の秦野さんに手招きをされて、私たちは周りの人に頭を下げながら、隙間を縫うように畳を進んだ。
この町にきてまだ四ヶ月。
私たちは、どこに座っていいのかも、まだ分からない。
少し前の壁際に、美咲の姿が見えた。
私と同じ制服姿の彼女は、背中を壁に預けて、小さく膝を抱えている。
その隣には健太がいて、あぐらをかいたまま畳の目をじっと見つめていた。
開け放たれた玄関に近づくと、ざわざわとした声と、線香の匂いが混じって流れてくる。
「水城さん。ありがとうございます」
「この度はご愁傷様です」
翼のお父さんと、うちのお父さんのやり取り。
互いに深く頭を下げるその動きが、やけにゆっくりに見えた。
「汐莉ちゃんも……ありがとう。翼と、よく一緒にいてくれたよね」
私は、小さく頭を下げることしかできなかった。
いつもは薄着で、港でもひときわ目立っていた翼のお父さん。
見慣れない真っ黒のスーツ姿は、全く別の人みたいに思えた。
靴を脱いで上がると、畳の部屋には人がぎっしりと集まっていた。
「水城さん。こっちこっち」
近所の秦野さんに手招きをされて、私たちは周りの人に頭を下げながら、隙間を縫うように畳を進んだ。
この町にきてまだ四ヶ月。
私たちは、どこに座っていいのかも、まだ分からない。
少し前の壁際に、美咲の姿が見えた。
私と同じ制服姿の彼女は、背中を壁に預けて、小さく膝を抱えている。
その隣には健太がいて、あぐらをかいたまま畳の目をじっと見つめていた。



