オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

屋台をひと通り見終えて歩いているとき、ふと、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。

私は思わず翼の服の袖をつかんで、屋台を指さす。

「……あれ」

鉄板の上で、ジュウジュウと音を立てている焼きそば。
翼はその屋台を見ると、くしゃっと笑った。

「お、翼!遅かったじゃねーか!」
鉄板の前に立っていたのは、翼のお父さんだった。

翼は少し照れたように笑う。

「うん。焼きそば、ふたつくれる?」
「まかせろ!」

翼のお父さんはヘラを手に取り、鉄板の上の麺を手際よく炒めていく。

その様子をぼんやりと眺めていると、ジュウッ、という音と一緒に、焼きそばはあっという間に出来上がった。

「ほらよ」
翼のお父さんの額から汗がぽたっと落ちた。

翼はそれに気づくと、鉄板の裏側に回って、そっとその汗を拭きとる。

「大ちゃん、いい息子持ってるな!」

隣の屋台にいたおじさんの言葉に、翼のお父さんは胸を張るようにして笑った。

「……ああ、俺の息子だからな!」

あまりにも堂々とした言い方で、私は思わず目を丸くする。

今日のお昼、翼の様子がおかしかったことに、もしかしたら気付いていたのかもしれない。

思い切りのいい言葉を言いながらも、その耳は赤く染まっていた。

「……うるせえよ」

小さくつぶやく翼は、恥ずかしそうだった。

でもその横顔は、とっても嬉しそう。

それを見て、私は胸の奥がふっと軽くなる。

——翼もわかったかな。

邪魔なわけない。
翼は本当に愛されてるってこと。