前世の婚約者は王太子殿下でした

 フョードルにそんな野望があったのかと、驚いたレーナは両手で口を覆った。
 まさか自分の甥を陰で殺めようとするなんて……。
 不敵に笑うフョードルの顔が浮かんできてしまい、思わずふるふると頭を横に振る。

「今の話は他言無用で頼む。黒幕があの男なのはわかっているが、まだ証拠を掴んでいない。引きずり出すには、君の予知夢の力が必要になるだろう」
「わかりました。私の夢で、殿下を必ずお守りします」
「今後、政変が起こるようなことは俺が許さない。そんなに心配するな」

 オスカーがゆるい笑みを浮かべるのを見て、レーナは苦笑いを浮かべた。
 
「そうだ、レーナに見せたいものがある」

 そう言ってオスカーは立ち上がり、部屋に据え付けられているクローゼットの扉を開けた。

「これを君に」

 なにがあるのか気になってあとをついていったレーナに、オスカーは豪奢な宝石や装飾が施されたドレスを掲げて見せた。
 レーナにとって、上流貴族……いや、王族が公式の場で身に付けるようなドレスを間近で目にするのはもちろん初めてだ。

「この世界で君に必ずまた会えると信じていた。だからこのドレスを作らせておいたんだ」
「私の……ために?」
「そう。庭に咲いている紫苑の花に色が似ているだろう?」