前世の婚約者は王太子殿下でした

「まだ正式な沙汰が下されていないんだが、俺に毒を盛った犯人がわかった」

 あれから王宮内は普段の落ち着きを取り戻しつつあったけれど、役人たちが調査を続けているのはみんな知っていた。
 口には出さないものの不安な毎日を送っていたのだ。

「誰だったのですか?」
「使用人のマリーザだ」

 犯行の証拠を掴もうと私も探っていたが、彼女にはずっと無視されている。
 青い小瓶のことは、「レーナが部屋に持ち込んだんです。私はハメられました!」と主張していたらしい。

「マリーザは罪を認めたのですか? でもどうして……」
「調べたら、マリーザの父親には多額の借金があったんだが、完済したそうだ。娘がカネを工面したと言っていたらしい。おかしいだろう?」

 たしかにそうだ。ただの使用人である彼女が、そんな大金を簡単に用意できるわけがない。

「カネをもらって指示されたらしい。取り調べた結果、口を割った。このあと国王陛下らから裁きが下される」

 実行犯はマリーザだが、さらに裏で誰かが糸を引いていたと知り、レーナは自然と苦悶に満ちた顔になった。
 いったい誰がそんな恐ろしい指示を?
 
「ここだけの話だが、王弟のフョードルが黒幕かもな」
「え!……フョードル殿下はオスカー殿下の叔父に当たるお方ではありませんか」
「自分が王座に就くためには俺が邪魔なんだろう」