「早朝に家を出るって、どこへ行くの? 鎌倉の別荘?」
「別荘はとうの昔に抵当に入っていて、じきに競売にかけられる。……この家もだ」
「煌太郎様に一目会ってから、」
「ならん。桜和、許せ」
これは昨日今日起こった出来事ではない、と桜和は唐突に理解した。
心配をかけないため、江蔵は経営不振のことを家族にずっと黙っていたのだ。
話を聞きながら震えている母にもつい先ほど伝えたのだろう。
「みんな、荷物をまとめてくれ。夜が明けるころにはここを発つ。すまないがそのあと誰かに我々のことを聞かれたら、知らないと言ってほしい」
使用人たちが嗚咽を上げて泣き始めた。この先自分がどうなるのか不安なのだ。
「お嬢様」
それぞれが肩を落として部屋に戻っていく中、千代が桜和のもとへやってきた。
こらえきれずに大粒の涙をぽろぽろと流している。
「千代……」
「お世話になりました。こんなに突然のお別れになるなんて……」
桜和は思わず両手で彼女の手をぎゅっと握った。
「別れるなんて嫌よ」
「お嬢様、気をしっかり持ってください。今はつらくても、風向きが変わる日は来るかもしれません」
千代は泣きながらも、桜和の目をしっかりと見てそう言った。
自分より三歳も年下で、まだまだ子どもだと思っていたのに……。
千代のほうがよほど理解力があり、順応性が高いと桜和は感心してしまう。
「別荘はとうの昔に抵当に入っていて、じきに競売にかけられる。……この家もだ」
「煌太郎様に一目会ってから、」
「ならん。桜和、許せ」
これは昨日今日起こった出来事ではない、と桜和は唐突に理解した。
心配をかけないため、江蔵は経営不振のことを家族にずっと黙っていたのだ。
話を聞きながら震えている母にもつい先ほど伝えたのだろう。
「みんな、荷物をまとめてくれ。夜が明けるころにはここを発つ。すまないがそのあと誰かに我々のことを聞かれたら、知らないと言ってほしい」
使用人たちが嗚咽を上げて泣き始めた。この先自分がどうなるのか不安なのだ。
「お嬢様」
それぞれが肩を落として部屋に戻っていく中、千代が桜和のもとへやってきた。
こらえきれずに大粒の涙をぽろぽろと流している。
「千代……」
「お世話になりました。こんなに突然のお別れになるなんて……」
桜和は思わず両手で彼女の手をぎゅっと握った。
「別れるなんて嫌よ」
「お嬢様、気をしっかり持ってください。今はつらくても、風向きが変わる日は来るかもしれません」
千代は泣きながらも、桜和の目をしっかりと見てそう言った。
自分より三歳も年下で、まだまだ子どもだと思っていたのに……。
千代のほうがよほど理解力があり、順応性が高いと桜和は感心してしまう。



