甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

「桜子……今、なんて?」

帰宅した左京に話すと、ネクタイの結び目に指を入れたまま、左京は時が止まったかのように固まった。

「あの、驚かせてしまってごめんなさい。今日、姉の健診に付き添って、産婦人科に行ったんです。そこで、その……妊娠しているって言われて」
「それは、お姉さんが、ではなく?」
「はい、私が」
「桜子が、妊娠、している……」

次の瞬間、左京は大きく目を見開いたかと思うと、桜子の身体をギュッと抱きしめた。

「やった、すごいぞ桜子! 赤ちゃんが、俺たちの、赤ちゃんが!」
「うっ、左京さん」
「あ、ごめん。大丈夫か?」

左京は桜子の顔を覗き込むと、ソファに座らせてからひざまずき、桜子の両手を握る。

「桜子……、夢みたいだ。ここに、桜子のお腹に、俺たちの赤ちゃんが?」

桜子のお腹に恐る恐る手を添える左京に、桜子も手を重ねた。

「はい。今、妊娠4週6日目ですって。まだ心拍は確認出来なかったので、来週もう一度診てもらいに行きます」
「分かった。俺も行くから」
「えっ、そんな。一人で行けますから」
「俺が行きたいんだ。赤ちゃんは俺の子でもあるんだから」

真剣な左京のその言葉に、桜子は言葉を詰まらせる。

「そうですね。左京さんと私の赤ちゃんを、私が大切に育てます」
「ありがとう、桜子。俺も必ず守るから。桜子と赤ちゃんを」
「はい……」

二人で涙をこらえながら、抱きしめ合った。