すっかり日常を取り戻した12月22日。
桜子は紅葉に付き添って、産婦人科を訪れていた。
紅葉は無事に妊娠6か月の安定期に入り、今日はおそらく赤ちゃんの性別が分かるとのこと。
紅葉の診察中、桜子は桃香と一緒に待合室のプレイルームで遊んで待っていた。
「桃香、桜子、お待たせ」
診察を終えて戻って来た紅葉に、桃香が「ママ!」と抱きつく。
「お姉ちゃん、お疲れ様。どうだった?」
「うん、順調だって。性別も分かったわよ」
「えっ、どっちだった?」
桜子が身を乗り出すと、紅葉は「んー、どっちでしょうか?」ともったいぶった。
「お姉ちゃん、早く教えてよ。ね、桃ちゃんはどっちだと思う? 赤ちゃん、女の子? それとも男の子?」
すると桃香は、紅葉を真似て「んー」と人差し指を頬に当ててから、「おとこのこ!」と笑う。
「えっ、桃香すごーい!」
「ええ!? ってことは、本当に男の子なの?」
「そうだって」
「ほんとに? 桃ちゃん、すごいね。よく分かったね」
桃香は得意気に「えへへ」と笑い、桜子のお腹に手を当てた。
「さっこちゃんのあかちゃんといっしょ!」
桜子と紅葉は同時に「ん?」と眉根を寄せる。
「桃ちゃん、おままごとの続き?」
「うん。さっこちゃんママだもんね」
「そっか。じゃあご飯にしますよー、桃ちゃん」
桜子は再び桃香とプレイマットに座り、おままごとセットで遊び始める。
だがしばらくすると、紅葉が真剣な表情で声を潜めて桜子に尋ねた。
「桜子、もしかして……。妊娠してない?」
「は?」
桜子は紅葉を振り返ると「してない、してない」と笑う。
「ほんとに? だって子どもの勘って、結構鋭いのよ。桃香の言ってること、あながち嘘じゃないかもしれないわよ?」
「それはそうかもしれないけど、ほんとに違うって」
「じゃあ次の生理はいつ?」
「えっと、先月は確か18日に来たと思うから、今月は16日かな」
「……桜子、今日22日よ」
え?と桜子は動きを止めた。
「そうだっけ? じゃあ今日辺り来るかも」
「普段は遅れることほとんどなかったわよね?」
「そう、きっちり4週間周期。だけどほら、アメリカに行ってたから。それで乱れちゃったのかな」
その時「津村紅葉さーん」と呼ばれて、紅葉は受付に向かった。
「桃ちゃん、お会計終わったら帰るから、そろそろお片付けしようか」
「うん!」
桜子が桃香とおもちゃを片付けていると、会計を済ませた紅葉が戻って来て「桜子」と呼ぶ。
「お姉ちゃん、終わった? じゃあ帰ろうか」
「桜子、これ書いて」
紅葉は手に、バインダーに挟んだ問診票を持っていた。
「え? なにこれ。誰が書くの?」
「だから桜子。今から診察してもらっておいで」
「どうして?」
「妊娠してるかもしれないから」
「え……え? ええー? それはないって!」
桜子は必死に頭の中で考える。
(だって初めて左京さんと、その、そうなったのは、今月に入ってからだもん。妊娠って、えっと、排卵って? いつだっけ?)
あまりに予想外のことに混乱する桜子を見て、紅葉が冷静に口を開いた。
「とにかくこの問診票を書いて」
「は、はい。分かりました」
桜子はバインダーを受け取ると、ソファに座ってドキドキしながら記入する。
書き終えると、マイナンバーカードと一緒に受付に持っていった。
「初診ですね。今、ちょうど空いているので、すぐにお呼びします。尿検査をしてお待ちください」
「は、はい。よろしくお願いします」
そんなふうに心構えもないまま受けた診察で、桜子は妊娠を告げられた。
桜子は紅葉に付き添って、産婦人科を訪れていた。
紅葉は無事に妊娠6か月の安定期に入り、今日はおそらく赤ちゃんの性別が分かるとのこと。
紅葉の診察中、桜子は桃香と一緒に待合室のプレイルームで遊んで待っていた。
「桃香、桜子、お待たせ」
診察を終えて戻って来た紅葉に、桃香が「ママ!」と抱きつく。
「お姉ちゃん、お疲れ様。どうだった?」
「うん、順調だって。性別も分かったわよ」
「えっ、どっちだった?」
桜子が身を乗り出すと、紅葉は「んー、どっちでしょうか?」ともったいぶった。
「お姉ちゃん、早く教えてよ。ね、桃ちゃんはどっちだと思う? 赤ちゃん、女の子? それとも男の子?」
すると桃香は、紅葉を真似て「んー」と人差し指を頬に当ててから、「おとこのこ!」と笑う。
「えっ、桃香すごーい!」
「ええ!? ってことは、本当に男の子なの?」
「そうだって」
「ほんとに? 桃ちゃん、すごいね。よく分かったね」
桃香は得意気に「えへへ」と笑い、桜子のお腹に手を当てた。
「さっこちゃんのあかちゃんといっしょ!」
桜子と紅葉は同時に「ん?」と眉根を寄せる。
「桃ちゃん、おままごとの続き?」
「うん。さっこちゃんママだもんね」
「そっか。じゃあご飯にしますよー、桃ちゃん」
桜子は再び桃香とプレイマットに座り、おままごとセットで遊び始める。
だがしばらくすると、紅葉が真剣な表情で声を潜めて桜子に尋ねた。
「桜子、もしかして……。妊娠してない?」
「は?」
桜子は紅葉を振り返ると「してない、してない」と笑う。
「ほんとに? だって子どもの勘って、結構鋭いのよ。桃香の言ってること、あながち嘘じゃないかもしれないわよ?」
「それはそうかもしれないけど、ほんとに違うって」
「じゃあ次の生理はいつ?」
「えっと、先月は確か18日に来たと思うから、今月は16日かな」
「……桜子、今日22日よ」
え?と桜子は動きを止めた。
「そうだっけ? じゃあ今日辺り来るかも」
「普段は遅れることほとんどなかったわよね?」
「そう、きっちり4週間周期。だけどほら、アメリカに行ってたから。それで乱れちゃったのかな」
その時「津村紅葉さーん」と呼ばれて、紅葉は受付に向かった。
「桃ちゃん、お会計終わったら帰るから、そろそろお片付けしようか」
「うん!」
桜子が桃香とおもちゃを片付けていると、会計を済ませた紅葉が戻って来て「桜子」と呼ぶ。
「お姉ちゃん、終わった? じゃあ帰ろうか」
「桜子、これ書いて」
紅葉は手に、バインダーに挟んだ問診票を持っていた。
「え? なにこれ。誰が書くの?」
「だから桜子。今から診察してもらっておいで」
「どうして?」
「妊娠してるかもしれないから」
「え……え? ええー? それはないって!」
桜子は必死に頭の中で考える。
(だって初めて左京さんと、その、そうなったのは、今月に入ってからだもん。妊娠って、えっと、排卵って? いつだっけ?)
あまりに予想外のことに混乱する桜子を見て、紅葉が冷静に口を開いた。
「とにかくこの問診票を書いて」
「は、はい。分かりました」
桜子はバインダーを受け取ると、ソファに座ってドキドキしながら記入する。
書き終えると、マイナンバーカードと一緒に受付に持っていった。
「初診ですね。今、ちょうど空いているので、すぐにお呼びします。尿検査をしてお待ちください」
「は、はい。よろしくお願いします」
そんなふうに心構えもないまま受けた診察で、桜子は妊娠を告げられた。



