甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

「Hi! ハジメマシテ、カイルデス」

待ち合わせのフレンチレストランの個室に行くと、ブロンズヘアの爽やかな男性が笑顔で立ち上がる。

「初めまして、桜子です」

握手をすると、カイルはそのまま桜子と頬を合わせてチークキスをした。

左京がムッとして桜子の肩を抱き寄せると、「Are you jealous?(妬いてるの?)」と笑う。

「サキョウが女性と一緒にいるところ、初めて見た。いつのまにこんなすてきな女性を捕まえたんだ?」
「いいから早く仕事の話をしろ」
「ちょっとくらい、いいじゃないか」

カイルは左京と英語で話したあと、桜子ににっこりと笑いかけた。

「Why don't you leave him and marry me? (サキョウはやめて、僕と結婚しない?)」

カイル!と左京が目の色を変えるが、桜子は「No, I can't. Because I truly love him.(いいえ、出来ません。私は彼を心から愛しているので)」とさらっと答える。

「桜子……」

左京に見つめられ、桜子は急に恥ずかしさが込み上げてきた。

「えっと、乾杯しませんか?」
「そうだな。さっさとミーティングを終わらせて、二人でデートに行こう」

するとカイルが「Oops, I get what you're talking about.(おっと、君たちがなにを話してるか分かった)」と肩をすくめる。

それなら話は早いと、左京は乾杯するなり仕事の話を始めた。

カイルは頷きながら真剣に左京の言葉に耳を傾け、最後に満面の笑みで頷く。

「すばらしいプロジェクトだと思う。ぜひ我々にも手伝わせてくれ。自然を壊さず、日本らしさも大切にしながらデザインするよ」
「ああ、よろしく頼む」

二人が固い握手を交わし、カイルは桜子にも握手を求めた。

「I can't wait for beautiful cherry blossoms as lovely as you to bloom in America.(あなたのように美しい桜がアメリカで咲くのが待ちきれないよ) 」

耳元でそうささやくカイルの肩を、左京が後ろからガシッと掴んで桜子から引き離す。

「サキョウ、ヤキモチが過ぎるぞ」
「なんとでも言ってくれ。じゃあな、カイル」
「サクラコにもまた会えるよな?」
「無理だ」
「おい!」

揉める二人に苦笑いして、桜子がカイルに笑いかけた。

「I'm looking forward to seeing you again.」
「I feel the same way. Thank you, Sakurako.」

カイルは勝ち誇ったように、左京にフフンとあごを上げてみせた。