甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

翌日は、朝から早速ショッピングに出かけて、左京は桜子の服やバッグなどを次々と選んだ。

「ちょっと、左京さん。いくらなんでも買い過ぎですよ」
「俺が見たいんだ、色んな桜子を。お、このドレスもいいな」
「そんな大人っぽいドレス、どこで着るんですか?」
「俺の前だけで」
「ええ!?」

もはや横からなにを言っても聞き流されてしまう。

(試着もせずに買うなんて。でもこんな大胆なドレス、試着させてって言うのも恥ずかしいし……)

ソワソワしているうちに、左京はスタッフに「あれとこれとこれも」とどんどん指を差し、まとめてカードで支払った。

「さてと、ホテルに帰ったら着替えてカイルとランチミーティングだ。桜子、たくさん食べな」
「あ、はい」

部屋に戻ると、桜子はたった今買ってきたばかりの服の中から、一番落ち着いた雰囲気のダークブルーのドレスを着てみる。

オフショルダーで肩のラインは露わになってしまうが、ショールを掛ければ隠せそうだった。

ウエストやヒップなど、身体のラインを拾ってしまうのが気がかりだったが、ベルベットの光沢が美しく着心地もいい。

(今日はパーティーではなく、座って食事をするだけだから、そんなに気にしなくてもいいかな)

そう思い、リビングに行って左京に聞いてみる。

「左京さん、このドレスでいいでしょうか?」

スーツに着替えて髪を整えていた左京が振り返り、目を見開いた。

「……桜子」
「はい」

呼ばれて返事をするが、左京はしばらく固まったままだ。

やがてツカツカと歩み寄ると、桜子をグイッと抱きしめ、強引にキスをする。

「ちょ、んん……、左京さん。あの、んっ、リップが」

いつもの流れですっかりメイクが崩れ、桜子は左京の胸を押し返してからもう一度リップを塗り直し、左京の唇もティッシュで拭った。

「もう、毎回こうなんですから」
「仕方ないだろ? 毎回桜子がきれいすぎるんだから」

そう言ってまた抱き寄せようとする。

「だめ」

すんでのところで桜子が左京の口元を手で覆って阻止した。

「ふふっ、私の勝ちです」
「なにをー? 桜子、戻って来たら覚悟しろよ」
「あっ、大変。遅れちゃう。ほら、左京さん。行きますよ」
「待て、桜子! そんな格好で一人で行くな。男が寄って来るだろ」

左京は急いでジャケットを着ると、桜子の手を取って腕に掴まらせる。

「では行きますか、愛する奥さん」
「ふふふ、はい。いつもすてきな旦那様」

二人で微笑み合って部屋を出た。