甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

アスペン滞在最後の日を、左京は桜子と二人で過ごすことにした。

「それでは常務、奥様。我々はひと足お先にアッシュフォードに向かいます」
「ああ。現地でまた落ち合おう」

門倉たちを見送ると、左京は待ちきれないとばかりに桜子の肩を抱き寄せる。

「桜子、デートするぞ」
「え? 夫婦なのにデート?」
「当たり前だ。愛する人と二人の時間を楽しむんだからな。どこに行きたい?」
「えーっと、じゃあお買い物に行きたいです。可愛い小物や雑貨を見たくて」
「分かった。小物なんて言わずに大物も買え」
「もう……大物ってなんですか? あと、戸部さんへのお土産も」
「戸部には温泉まんじゅうでどうだ?」
「どこに売ってるんですか!?」

二人で笑いながら手を繋ぎ、ショッピングに出かける。

桜子は、クリスマスのオブジェやきれいな柄のレターセット、ランチョンマットやキャンドルなど、海外ならではの味わいの雑貨に目を輝かせた。

だが手に取るもの全てを左京がレジに持って行く為、うかつに触れなくなる。

それでも3秒見たものは「これも買いだな」とあっさり持って行かれた。

高級ブランドの店にも立ち寄る左京に、桜子が「なにを買うの?」と尋ねると、「桜子の服とバッグとアクセサリー」とあっさり返される。

「ええ!? 私、ほしい物はないですよ?」
「それなら俺が選ぶ。桜子はソファで待ってて」

そう言ってスタッフと相談を始めた左京は、しばらくすると大きなペーパーバッグを手に戻って来た。

「お待たせ。一度ホテルに戻って着替えてから、オペラハウスへコンサートを聴きに行こうか」

オペラハウス?と、桜子は驚く。

「美術館だけじゃなくて、オペラハウスまであるんですか?」
「ああ。アスペンって、実は芸術の街でもあるんだ。ヴィクトリア様式のオペラハウスでクラシックコンサートを聴けるし、夏には音楽祭も開かれる」
「そうなんですね、すてき」

ホテルのスイートルームに戻ると、桜子は左京に手渡されたドレスに着替えた。

「えっ、これ、大人っぽくないですか?」

胸元と袖口にファーがついたボルドーのドレスは、丈も長くシンプルながら、着てみると身体のラインにピタリと沿う。

胸やヒップ、ウエストのくびれまで露わになってしまった。

「どうしよう、恥ずかしくて無理です」

半泣きになってそう言うと、左京は目を見開いて固まっていた。

「あの、左京さん?」
「ああ、いや、うん。俺の桜子がこんなにセクシーだとは。困ったな。他の男の目に触れさせたくない」
「じゃあ着替えますね」
「いや、待て。俺はこの桜子がいいんだ」
「でも恥ずかしいの。どうすればいい?」

困り果てて上目遣いに左京を見上げると、左京はたまらないとばかりにクッと表情を歪めて、桜子を抱きしめた。

「あの、左京さ……」

キスで言葉を封じられ、左京の熱い想いに身体が溶かされる。

ふっと力が抜けそうになる桜子を、左京はますます強く胸に抱きしめた。

「桜子……俺の桜子」
「ん……、左京、さん」
「愛してる」

吐息と共にささやかれ、桜子は甘いしびれに酔いしれる。

なにも考えられなくなり、ただひたすら左京の腕の中で、降り注がれるキスを一身に受け止めていた。