甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

その次の日は、テーマパークへも足を伸ばす。

童心に返って笑顔を弾けさせる桜子を見ているだけで、左京は幸せな気持ちに包まれた。

サンフランシスコへも車を走らせ、ケーブルカーに乗ったり、フィッシャーマンズワーフで美味しいシーフードを味わう。

「このクラムチャウダー美味しいですね」
「桜子の好きな、チョコレートサンデーが有名なお店もあるぞ」
「それは食べなきゃ!」

お腹がいっぱいになると、二人で肩を並べて夕暮れのゴールデンゲートブリッジとアルカトラズ島を眺めた。

名残を惜しむ桜子に、左京はサンフランシスコで1泊しようと提案する。

「いいの?」
「もちろん。桜子が予定調和にこだわりがなければ」
「ないです、ないです。私の人生、行き当たりばったり」
「いや、人生までは語らなくていいから」
「ふふふ。でも人生が予定調和なら、私、ずっと独身だったと思います」

え?と左京は真顔に戻った。

「両親の離婚や、姉からの教えもあって、私はもう結婚に甘い夢は見ないって決めてたんです。だけど思いがけず左京さんとお見合いして、今は本当に良かったと思っています」
「……お姉さんの教えって?」

聞かれて桜子は、思い出すようにゆっくりと口を開く。

「恋愛なら自分が1番好きな人を追いかけたらいいけど、結婚するなら自分を1番好きでいてくれる人にしなさいって」
「自分を1番、好きでいてくれる人……?」

左京は呟きながら考えた。

(それなら、俺達のこの結婚は?)

すると桜子が続けた。

「私、左京さんとの結婚を決めた時に思ったんです。1番好きでもなく、1番好きでいてくれる人でもない相手と結婚する私は、幸せにはなれないのかなって。でも今は、姉に胸を張って言えます。好きっていう恋愛感情に縛られなくても、幸せになれたよって。それはきっと、相手が左京さんだったから。私をいつも大切にしてくださって、本当にありがとうございます」

にっこりと笑いかけられ、左京は複雑な気持ちになる。

(つまりこの結婚には、恋愛要素がない。俺達の間には、好きという感情がないということか……)

スッと心が冷たくなった時、桜子が「左京さん?」と心配そうに見上げてきた。

「ごめん、なんでもない。じゃあそろそろホテルを探そうか。いくつか電話で聞いてみるよ」
「はい! ありがとうございます」

旅行シーズンでもないせいか、あっさり1つ目のホテルを押さえることが出来て、早速車で移動した。