甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

「左京さんが運転するの? すごい!」

ホテルのロータリーに用意された鮮やかなブルーのスポーツカーを見て、桜子が驚いたように左京を見上げる。

「そうなんだが、さすがにこれは……」

藤原が用意してくれたのは、コンバーチブル、つまりルーフが開閉出来るオープンカーだった。

映画ではお馴染みのかっこいい車だが、いざ自分が運転するのは恥ずかしい。

しかも、案外女性には「髪が風で乱れるから」と嫌がられると聞いたことがあった。

ルーフを閉じようと思ったが、桜子は藤原が開けたドアから右の席に座ると、期待の眼差しで左京を見上げる。

「左京さん、このまま走ってもいいの? 警察に止められない?」
「大丈夫だよ」
「そうなのね。でも晴れの日じゃないとだめよね? 雨が降ったらビショ濡れだもん」
「その時はルーフを閉じればいいんだ」
「えっ、閉じたり出来るの? すごい!」

もはやアトラクションの気分なのだろう。

桜子は、早く動かしてほしいとばかりに、キラキラした目で左京を見つめる。

「じゃあ、行こうか」
「はい、お願いします」

左京はひとまずルーフを開いたまま走らせることにした。

ギアを操作してから、クラッチペダルとアクセルを調整し、ゆっくりと車を発進させる。

「お気をつけて行ってらっしゃいませ」

そう言って見送る藤原に、桜子は「行ってきます!」と手を振った。