甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

迎えたパーティー当日。

その日は金曜日で、いつも通り朝8時に戸部がマンションまで迎えに来た。

「では、行ってくる。15時に戸部が君をブティックまで送るから」
「はい、かしこまりました。行ってらっしゃいませ」

車に乗り込むと、左京は窓をさり気なく開ける。
戸部が明るく桜子に話しかける声が聞こえてきた。

「では奥様、15時にお迎えに上がりますね」
「はい。エントランスでお待ちしております」
「いえいえ、お部屋にいてくださって大丈夫ですよ。時間も前後するかもしれませんから。着いたらインターフォンを鳴らしますね」
「ありがとうございます、戸部さん。どうぞよろしくお願いいたします」
「お任せください。奥様、そんなに身構えなくていいですからね」
「はい。でもちょっと緊張してしまって……」
「奥様なら大丈夫ですって! 色んな男性に声をかけられるでしょうから、逆にそっちの方が心配で」

もう限界だとばかりに、左京は「戸部」と遮った。

「早く出せ」

冷たく言い放つと、「は、はい!」と慌てて戸部は運転席に向かう。

(まったくもう、油断も隙もないな。なにがそっちの方が心配だ。俺はお前が1番心配だ)

ブツブツと心の中で愚痴をこぼしていると、桜子が近づいて来た。

「左京さん、行ってらっしゃい」

小さく手を振る桜子に、左京は思わず口元を緩める。

「行ってくる。またあとで」
「はい、お気をつけて」

桜子の笑顔に、戸部への愚痴は跡形もなく吹き飛んでいた。