甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

子どもたちが幸せを運んで来てくれたかのように、それからの日々は明るく賑やかになる。

紅葉と清志から、母と再会したことを聞いた父も、昔のことを詫びたいと言って、改めて料亭に招いた。

「今なら分かるんだ。母さんをどれだけ追い込んでいたか。あの頃の父さんはとにかく料亭を守るのに必死で、母さんのことを気遣ったり労ったりもしていなかった。いてくれるのが当然だとえらそうに構えていたんだな。母さんが家を出て行ったのは、父さんの責任だ」
「それなら、お母さんにもそう伝えてあげて」

紅葉の言葉に父は頷き、料亭で二人は互いに過去のことを正直に打ち明けたらしい。

「時間が解決してくれるってこともあったかな。お互い老けたし」

そう言って二人は、屈託のない笑顔を浮かべた。

「おばあちゃん、おりがみおしえて」
「いいわよ、桃ちゃん」

母は紅葉が料亭を手伝う間、桃香と和志の面倒を見る。
時々桜子も悠真を連れて遊びに行った。

左京の仕事も順調で、いよいよアメリカでの旅館の建設が始まった。

「オープンは来年の冬だ。それでな、桜子。折り入ってお義母さんにお願いがあるんだけど」

ある日そう切り出されて、桜子は首をひねる。

「お母さんに? どんなお願い?」
「『しらゆき』の女将さんだったお義母さんに、旅館の仕事を手伝ってもらえないかなと思って。オープン前のスタッフトレーニングとして、立ち居振る舞いとかおもてなしの作法とかを」
「ええ!? どうだろう。お母さんに出来るかな」
「とにかく少し話をさせてほしい」

すると母は、左京から話を聞くなり二つ返事で引き受けた。

「こんな私でお役に立てるなら、なんだってします。アメリカの奥地で凍えようとも、熊に襲われようとも」
「いえ、お義母さん。オープン前なので、日本で研修していただければ大丈夫ですので」
「あら、そうなの? 行ってみたかったわ、アメリカ」
「でしたら、オープン前後に一緒にお手伝いしていただけますか?」
「もちろん行くわ! たとえ凍えて固まっても、熊に食われても後悔しません」
「いえ、そんな野蛮な所ではありませんから」

そして悠真が1歳3か月になった頃。
桜子と左京は悠真を連れて、なぜだか紅葉も桃香と和志を連れて、母と一緒にアメリカへと飛んだ。