甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜

すくすくと大きくなる悠真は、無事に1か月健診も終えた。

いつものように和室に敷いた布団に、悠真を挟んで3人で横になる。

すると、左京が思い切ったように桜子に切り出した。

「桜子、お義母さんに会いに行かないか?」

え?と桜子は左京を見つめる。

「私の母に、ですか?」
「ああ。結婚のご挨拶も出来ていないまま、悠真も生まれた。少しでも早くお会いしたいと俺は思っている。もちろん桜子やお義母さん、それにお義父さんのお気持ちが大事だが、許されるのなら」

桜子は視線を落として、しばし考え込んだ。

「桜子? 無理はしなくていいんだぞ?」
「はい。左京さんのお気持ちはとても嬉しいです。実は、母とはごくたまにですが、メッセージのやり取りをしていました。もちろん結婚の報告も。だけど母からは一方的に、もう連絡してこないでと言われるばかりで。結婚式にも招待しましたが、断られました。
姉の時もそうでしたし、未だに桃ちゃんも会ったことはありません」
「そうだったのか」
「ですからもし会いに行ったら、母は左京さんになにか失礼なことを言うのではないかと、心配で……」

左京は手を伸ばし、うつむく桜子の頭をなでる。

「そういう理由だったのか。気づいてやれなくてごめん」
「いえ、こちらこそすみません。左京さんのお父様にも失礼なことをして」
「そんなことは気にしなくていい。それよりお義母さんは、今どこでどうしていらっしゃるんだ?」
「都内に小さなアパートを借りて一人暮らしをしているそうです。祖父母も数年前に立て続けに亡くなって、母の実家はもうないので」
「そうか……」

左京はじっと宙を見つめてから、再び口を開いた。

「桜子、お義母さんに手紙を書いてもいいか?」
「え? 左京さんが母に?」
「ああ。手紙なら、読みたくなければ放っておくことも出来る。もちろん読んでほしいけど、どう受け止めるかはお義母さんにお任せするよ」

桜子は少し思案してから「分かりました」と頷く。

左京は早速、桜子の夫としての挨拶と悠真が生まれた報告、そして必ず二人をお守りしますと文字にしたためた。

最後に、笑顔で悠真を抱いた自分たち3人の写真を同封し、桜子から聞いた住所に宛てて送った。