「……こういうことを聞くとさ、今の時代、パワハラ?セクハラ?になるかもしれないんだけど」
「?」
「水瀬さんには、特別な人はいないの?」
25歳。
ブライダルプランナー。
日々、幸せを築いていく人々の一助に奔走する一方、未だ、恋人のひとりもいない透和は。
「残念ながら……」
と、微笑んだ。
「あいつがいたら、絶対、葛藤していたよなぁと思って……気になったけど、ハラスメントのひとつだと思うし、答えたくないなら答えなくていいからね」
「いえ。別に隠し立てしたいことは無いですから……それより、父が葛藤?」
透和の父親は、透和が5歳の頃に亡くなった。
元々、あまり身体が強くない方だったらしいが、アルバムの中はいつも笑顔で、どこか遠く、遠い記憶。
透和の名前を呼ぶ声はいつも、優しさを孕んでいたことは覚えている。
「うん。君が産まれる前からね、あいつは大騒ぎ。絶対、君の結婚式は自分が手掛けるんだ〜って喚いては、『お嫁にあげたくない』って泣いて、俺と君のお母さんには呆れられてた」
「……産まれてないんですよね、私」
「そう。まだ産まれてなかったの。しかも、6ヶ月くらいの頃の話」
それは呆れられても仕方ないよなぁ、と、写真の父の顔を思い出しながら、笑ってしまう。
「多くの計画書、大量に書き遺しているからね」
「……え?」
「君が幼い頃、呼び出されたんだ。病床に伏したあいつに、君の結婚式の諸々についてプロデュースされたものをね」
「……」
「だから、君が良ければ、僕にプロデュースさせて欲しいなぁと」
遠慮がちにそう言う、元ブライダルプランナーのオーナー。
ハラスメントを気にしながらも聞いてくれたのは、父の最後の願いを果たす為らしい。


