裏切りの夜に死んだ私が、憧れの社長を救うため時をかけました。

 私はポケットからハンカチを取り出し、母の口周りにまいた。
 自分は息を止めて必死に階段を降りた。

「ベビーカー、なんでここに」
 30階の踊り場にベビーカーが置き去りになっていて、赤ちゃんが乗っている。
 しかも、ベビーカーは海外製の大きなもので畳めるものではない。

「ママ、ごめん一人で降りて。」
 私はベビーカーを抱えて、階段を降り出した。
 母は呆然としていて、全くついて来ようとしてくれない。

「ママ、お願いだから言うことを聞いて」

 私はベビーカーの重さに気を取られ、足を踏み外してしまった。
 誰かが私を支えたのが分かり、ふと顔を上げる。