裏切りの夜に死んだ私が、憧れの社長を救うため時をかけました。

 確か、鈴木さんは母より4歳年上で、化粧っけもなく髪も白髪混じりだったりする。

 鈴木さんが母より美しく若かったら、母も警戒して家の出入りを自由にさせていなかったかもしれない。
 母は鈴木さんを信用し、家の鍵まで渡していた。
 信用していた家政婦に愛する夫を取られたからか、母は鬼の形相をしている。

「もう、おしまいよ。みんな死ねば良い!」
 いつも落ち着いている母が、アイスピックを持った手を振り回しだした。
 このような母は見たことがない。

「パパ、鈴木さんと先に避難して」
 緊急時はエレベーターが止まってしまう。
 しかも、火事なら火元は一階上の40階だ。
 ここにいたら危険だ。