裏切りの夜に死んだ私が、憧れの社長を救うため時をかけました。

「渡辺隆は、私の父です。今は、婿入りして木嶋隆になっています。鈴木さん、あなたはとても素敵な人です。父が母ではなくあなたの方に行ってしまいそうなので、もうここには来ないでください」

 私は泣きそうになるのを我慢しながら嘘を吐いた。
 鈴木さんが母より素敵のは本当だが、父は鈴木さんのところに行くこともないだろう。

 父は、おそらく鈴木さんのことも好きではない。

 父は母の束縛が面倒になって、一時的に鈴木さんを利用しようとしただけだ。

 私が地獄の日に覚えているのは鬼の形相の母の表情ばかりだ。
 でも、父の表情も少し覚えている。