来賓から祝辞や花束が贈られ、滞りなく就任式が終了した。みんな次々と席を立って会場をあとにしていく。
私もそっとバッグを掴み、目立たないよう出口へ向かった。
会場の外に出て、冷えた空気を大きく吸い込んでいると、気持ちがしだいに落ち着きを取り戻した。
情けない。動揺しないでいようと思っていたのに、彼の姿を遠目から見ただけでこの有様だ。
化粧室の表示を見つけ、逃げ込むようにそこへ入った。 鏡の中の自分は想像していたよりも沈んだ顔をしている。
「……仕事よ」
周りに誰もいないのをいいことに、ひとりごとを漏らした。
今日は取材で来ただけ。過去は関係ない。
新商品に関してはできるだけメモを取ったし、中谷さんへ引き継ぐためにきちんと整理しておかなきゃ。
フーッと細く息を吐き出したあと、私は化粧室を出た。
廊下は思いのほか静かだった。会場の中にはまだ人がいて、かすかに声が漏れ聞こえてくる。
そっとこの場をあとにしようと角を曲がったそのとき、出会いがしらに人とぶつかりそうになって顔を上げた。
「あなた……どうしてここに?」
そこには、私を見てひどく驚いた顔をした飯塚さんが立っていた。
私もそっとバッグを掴み、目立たないよう出口へ向かった。
会場の外に出て、冷えた空気を大きく吸い込んでいると、気持ちがしだいに落ち着きを取り戻した。
情けない。動揺しないでいようと思っていたのに、彼の姿を遠目から見ただけでこの有様だ。
化粧室の表示を見つけ、逃げ込むようにそこへ入った。 鏡の中の自分は想像していたよりも沈んだ顔をしている。
「……仕事よ」
周りに誰もいないのをいいことに、ひとりごとを漏らした。
今日は取材で来ただけ。過去は関係ない。
新商品に関してはできるだけメモを取ったし、中谷さんへ引き継ぐためにきちんと整理しておかなきゃ。
フーッと細く息を吐き出したあと、私は化粧室を出た。
廊下は思いのほか静かだった。会場の中にはまだ人がいて、かすかに声が漏れ聞こえてくる。
そっとこの場をあとにしようと角を曲がったそのとき、出会いがしらに人とぶつかりそうになって顔を上げた。
「あなた……どうしてここに?」
そこには、私を見てひどく驚いた顔をした飯塚さんが立っていた。



